焼物製作において、姿形となる生地のみを作り続けるプロがいます。
産地では俗に「生地屋さん」と呼ばれるその仕事は焼物づくりにおいて、土から姿に変わる最初の工程を担っています。
取引先である波佐見焼の窯元、陶房青さんの工房の目の前に生地屋を営んでおられる村松生地さんにお邪魔しました。
村松生地さんは袋物(フクロモノ)と呼ばれる、口の窄まった形状のもの、徳利や土瓶、急須等の生地製造を約70年に渡り手がけて来られました。
袋物を得意とされる理由はその製法にあり、排泥鋳込み(ハイデイイコミ)という技術を駆使されます。
排泥鋳込みとは原料である陶土を液状にして石膏型に流し込み、その器に適した時間放置しその後石膏型を逆さまにして余分な土を外に流出させます。
そうする事により乾燥して型に付着した部分の陶土が器の形状となり生地になります。
この製法の特徴としては通常の型作りでは成型のできない、口が狭くて中が空洞である器を作ることが出来ます。
以前は徳利や酒瓶等の製作を手がけて来られましたが、時代の変化と共にその需要は減り、今では排泥鋳込みを専門で行われている生地屋さんは殆ど残されていません。
今回お話を伺った村松生地の3代目であられる村松信輔さんは創業当時からの技術を駆使し、今の時代に合ったワインボトルやフラワーベース、オイルポット等を手がけられ、忙しい日々を過ごされています。
インテリアショップや百貨店などで見かける器の中には、村松さんのような生地屋さんの手仕事も詰まっています。
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